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相続財産に借金がある場合はご用心。1円も相続しなくても借金はあなたについていきます。

2016年12月17日

 こんにちは。税理士の田口です。
 
 今回のコラムでは、相続財産に借金がある場合に起こるトラブルをご紹介したいと思います。
 
 数年前にお父様の相続が発生し、財産を相続した2人のご兄弟がいらっしゃいました。お母様はすでに亡くなっており、二人のご兄弟で遺産分割をすることになりました。
 
 お父様は家業として文房具店を経営しておりました。今から15年くらい前に長男様が後を継ぎ、長男様ご家族はお父様と同居しておりました。次男様は公務員で、お隣の県で生活をしている状況です。
 
 お父様の財産は、自宅兼店舗と預貯金1,000万円であり、この他に銀行からの借入金が2,000万円ありました。
 
 ご兄弟でのお話合いの結果、家業を継いだ長男様が自宅件店舗を、次男様は預貯金というように分けることになりました。また、銀行からの借入金も2,000万円も当然相続の対象となりますので、家業を継いだ長男様が引き受けることになりました。
 
 当然と言えば当然の遺産の分け方のように思えますが、最近、銀行から次男様に「お兄様が借金を返せない状況ですので、次男様が相続した分の借入金1,000万円を返済してほしい。」という連絡があったのです。
 
 次男様としてはまさに寝耳に水、借金は兄が相続したはずなのに、本当に銀行に兄の借金を返済しないといけないのでしょうか。
 
 結論としては、次男様は、長男様が相続した借入金2,000万円のうち、法定相続分の1/2部分である1,000万円を銀行に返済する義務があります。
 
 実は債務(借入金)は、相続の開始と同時に、法定相続分の割合に応じて各相続人が相続することになるのです。もちろん、遺産分割協議で誰が相続するのかを決めることは相続人間では有効ですが、債権者(今回の場合でいうと銀行)には主張できません。
 
 債権者側(銀行)としてみれば、万が一、最初から破産しそうな相続人が借入金を相続して、相続後にすぐに自己破産でもされてしまったら、貸したお金が回収できなくなってしまいますので、債権者の承諾を得られない限り、債務を誰かに寄せるということはできないのです。
 
 今回のケースで対応策はなかったのか?ということですが、実は2つの対応策があります。
 
対応策➀ 銀行、長男、次男の三者で「免責的債務引受契約」を締結する
 
 要は銀行と「この借入金は長男が引き受けるから、次男の債務は免除する。」という契約を結ぶのです。この契約が出来ればハッピーですが、銀行も長男が返済できる能力があるのかを審査することになります。長男に返済能力がないと判断すれば、この契約をしてもらうことはできません。むしろ、逆に銀行から「重畳的債務引受契約」を締結してほしいという依頼があるかもしれません。「重畳的債務引受契約」とは簡単に言ってしまえば、長男にも次男にも2,000万円の債務保証をしてほしい、ということです。これは断ることも可能ですが、断ると今後その銀行からの追加の借入は難しくなり、返済条件の変更をお願いしてもNOと言われる可能性が非常に高くなってしまいます。
 
対応策➁ 相続放棄をする
 
 これは相続発生後3ヵ月以内に、次男が相続放棄をしてしまえば、借金も相続する必要がなくなるということです。ただし、この方法はプラスの財産(今回であれば預貯金)も相続できなくなるというデメリットがあります。(もちろん今回のケースではもう間に合いません。)
なお、遺産分割協議で、次男が「財産は1円もいらない。」と主張しても、それは「相続放棄」にはなりません。家庭裁判所に申述して、初めて「相続放棄」が認められます。
 
 上記➀の免責的債務引受契約が締結できれば良いのですが、それは銀行次第ですし、➁の相続放棄は間に合ったとしても、長男が返済不能に陥っていない状況でプラスの財産を放棄するというのは判断が難しいかと思います。つまり、現実に相続が起きてしまった場合には成り行きに任せるしかありません。本当に悩ましいも問題です。
 
 しかし、実は相続の発生前であれば有効な対策法があります。皆さん、どんな方法だと思いますか?
 
 その方法は、次回のコラムでご紹介させて頂こうと思います。ではまた。