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きちんと知っておきたい、相続税が安くなる『小規模宅地等の評価減の特例』について その2

2016年10月5日

 こんにちは。税理士の田口です。
 
 今回のコラムでは、前回に引き続き「小規模宅地等の評価減の特例」(以下「特例」といいます。)について取り上げたいと思います。今回は二世帯住宅の場合に適用が受けられるかどうかを中心に説明させて頂きます。
 
 実は平成25年度の税制改正で、二世帯住宅の場合の「小規模宅地等の評価減の特例」の取扱いが改正され、より使いやすい制度となりました。
 
 二世帯住宅の場合は、建物が共有登記か、区分所有登記かで大きく取扱いが変わってきます。
 
(ケース4)父(被相続人)が所有している土地に父名義で二世帯住宅を建て、1階には父、母、2階には長男家族が住んでいる。父家族と長男家族は生計が一。長男から父への家賃や地代の支払はしていない。1階と2階は内部でつながっておらず、外階段で行き来をしている場合
 
→このケースの場合、相続人が母でも長男でも「小規模宅地等の評価減の特例」の適用があります。(前回のメルマガのケース1と同じ。)
平成25年度の税制改正前は、内部で行き来できない二世帯住宅の場合では長男家族と同居しているとみなされなかったため、長男が相続する場合は敷地の一部しか「小規模宅地等の評価減の特例」の適用が受けられませんでしたが、現行制度では敷地の全体について適用があります。
また、もし建物が長男名義であっても、父家族と長男家族との生計が別であっても、「小規模宅地等の評価減の特例」の適用がありますので、非常に使いやすいものとなっております。

 
(ケース5)二世帯住宅を建て、1階が父名義、2階が長男名義で区分所有登記されている場合
 
→区分所有登記とはマンションをイメージして頂くと分かりやすいと思いますが、要は一棟の建物の部屋ごとに所有者を登記することです。父と長男でお金を出し合って名義を共有にして一棟の建物として登記すること(共有登記)とは異なりますので、ご注意ください。
 もし二世帯住宅で区分所有登記をしている場合には注意が必要です。区分所有登記の場合の「小規模宅地等の評価減の特例」の取扱いは以下の通りです。
 
(父家族と長男家族との生計が一の場合)
➀土地を母が相続→土地の全体に適用有り
➁土地を長男が相続→長男が住んでいる2階部分に対応する敷地に適用有り
 
(父家族と長男家族との生計が別の場合)
➀土地を母が相続→父が住んでいた1階部分に対応する敷地に適用有り
➁土地を長男が相続→適用無し

 
 区分所有登記をすると、二世帯分の住宅ローンが借りることができ、また、不動産取得税や固定資産税の減税効果もあることから、不動産建築業者から区分所有登記を勧められることもありますが、建築コストが増え、「小規模宅地等の評価減の特例」の適用が受けられなくなる可能性がありますので、これから二世帯住宅の建設をお考えの方はよく検討して頂く必要があります。

 
(「小規模宅地等の評価減の特例」の適用を受けるための留意事項)
 
 いくつかのケースを取上げ、「小規模宅地等の評価減の特例」の適用を受けるための条件を確認してきましたが、どのケースにも言えることは、「小規模宅地等の評価減の特例」の適用を受けるためには、「相続税の申告期限(相続発生から10カ月)」までにその土地を誰が相続するかという「遺産分割協議」を完了させる必要があるということです。せっかく生前に節税対策をしたとしても、遺産分割で揉めてしまうとすべてが台無しになりますので、「遺言」で自宅の土地を誰が相続するか決めておくことを強くお勧め致します。
 
 なお、もし遺産分割協議が終わらない場合には、税務署に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出して一旦税金を納付し、3年以内に遺産分割を完了させることができれば、税金を取り戻すことができますので、必ず税理士に相談して、手続きを失念しないようにご注意ください。
 
 いかがだったでしょうか。「小規模宅地等の評価減の特例」の適用が有無で大きく相続税が変わってきます。後からこうしておけばよかったという後悔をしないためにも、しっかり生前で対策をしていきたいですね。ではまた。